ポチ

 僕の数少ない幼少時代の思いでの一つ、ポチの大移動がある。

 夏休み、母親の実家に海水浴に行くことになった。僕は多分5歳。実家は静岡の袋井という所だ。今は便利になったがその当時不便でそこにつくのがほぼ一日がかりであった思い出がある。国鉄で浜松まで、そして軽便という遠州鉄道に乗ってのんびりのんびり、やっとその袋井に着く。

 家の留守を守るのが柴犬のポチである。家と行っても社宅である。同じような家がずーっと続いていて、長屋のようであった。そのポチの面倒を斜め前のお宅に任せ、家族の夏休みをとった。

 親父は、犬小屋ごとそのお宅に預けた。2泊3日後、帰宅すると玄関には犬小屋とポチがいる。斜め前のお宅が帰る日にあわせて移動してくれたのだと家族中が思った。その親切さに家族中そのお宅に挨拶に行く。

 するとどうだろう。「ポチが犬小屋を引っ張っていったのよ」と。3日間、彼は家を僕たちにかわって守り続けていた。

 ハチには叶わないが立派な忠犬ではないか。僕の数少ない幼き頃の思い出である。

 ミケの話は後日ということで。

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